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No.5

2月8日 円高不況を声高に叫びながら、 一方で内需拡大を訴えるなんて、 考えてみればナンセンス。 まして、 輸出品総額の何倍ものお金がマネーゲームに投ぜられているというから、 今にひどい目にあうのは、 そんな人たちだけだろうと友人に話すと、 「アホ、 お前のようなコマかいところが、 一番先につぶされるんやぜ」 と馬鹿にしたように返事した。
2月16日 『富山の茶室』 が思った以上に売れてビックリ。 書店の人が口々に 「久しぶりやね、 こんなヒットは」 といわれるから、 「いや、 こんなのは初めてです」 と照れ笑いする。 なぜか、 人に 「もうかりましたね」 といわれると、 何か悪いことをしたように思えてならない。 それで、 「このもうけは越中資料集成の続刊にまわします」 とうろたえたように返事をしてしまう。 実際、 その通りなのであるが、 あくまでもうけないのが身上と人に訴えて歩くようで、 これもまた気持よくない。 小生のようなものは商売人の風上に決しておけない半端な存在であることが、 これでよくわかった。
3月28日 越中資料集成の第一巻 『富山藩侍帳』 が、 とうとう発刊できた。 解読された方々の喜んでいらっしゃる様子が目に浮かぶ。 しかし、 新聞広告や全国の研究家向けのDMの結果は、 はなはだ不調である。 ひとつは、 3月という公私にわたって多忙な時期のせいもあるだろうが、 この調子で果たして全14巻を刊行し終えられるだろうか、 腕組みをせざるをえない。 もちろん、 どんなことをしても刊行はするつもりであるが、 『富山の茶室』 のようなもうかる本は意識的に作れる器量でない。
4月10日 今年に入って、 毎月一冊のペースで新刊。 『鳩をとばせにいくんです』 も、 保護者会の父母の方々の熱意にほだされた発刊なのだが、 とにかく、 これでは異常な刊行ペース。 2月に発刊した 『北陸の古代寺院』 が大冊なのに現在300部ほど出ていっているからまだいいのだが、 このあと、 5月に新刊2冊、 6月にも2冊と、 そこまで今のような奮戦を日夜つづけることになる。 誰も悪くない、 みんな小生が引きうけてそうしたのだから。 それはわかっていて、 時々、 うらめしくなる。
誰か、 助けてくれる人はいないか。 歴史はもちろん、 森羅万象に興味があって、 編集も営業もやりますという人がいらっしゃれば申し出て下さい。 薄給、 ボーナスなし、 社会保険もなしではきたくてもこれないかもしれませんが―。 (1987年5月10日 勝山敏一)